特定非営利活動法人

FirstStep

東京/新宿区でピアサポート活動
不登校・ひきこもり家族支援NPO

参加者の声②

子どもの成長のために、親としてできること

先日22歳のひきこもりの男に、小学5年の男子の殺害容疑がかけられる事件があった。
容疑者は小学生時代、活発であったが、思春期から人格変容がおき、高校を退学、引きこもった。二人は剣道クラブで出会っているという。何かのはずみに、子どもにからかわれ、恨みが募っていったのか…。10歳で未来を断たれた少年の無念を思うと言葉もない。冥福を祈るばかりである。

しかし、息子が同じようにひきこもりであった私は、容疑者の親の無念にも心が痛む。大学教員の父、民生委員をしている母、どれだけ息子を案じていたことだろう。自宅から凶器箱が押収され、周囲は不審な行動を目撃している。親が気づかないはずはない。ここに至るまでに、なんとか出来なかったのであろうか。

子どもの精神状態がおかしい…、何かおかしい…と気づいたときに、親は何ができるのだろうか。
学校との相談、信頼できる医師への相談、公的、私的なひきこもり支援、信頼できる第三者からの働きかけ、話し相手やカウンセリング、スポーツサークルやたまり場探しなど…。
もちろん、最初、本人は誰にも会いたくはないだろう。支援のすべてが、日本各地で整っているわけではない。あったとしても、良い形で繋がっていくのはたやすい事ではない。だからといって、ただいたずらに時を待っていて良いものではない。
本人がすぐに動けなくても、親は最善を尽くして、あらゆる手立てを探し、同じ悩みを抱える親たちと支え合い、なんとか、子どもたちの脳を整え、成長させていかなければならない。

現在24歳になる私の息子は、感情が凍ったようになって18歳で引きこもった。対人恐怖、社会不安、人格障害、うつ病、思春期症候群、アダルトチルドレン、どれもあてはまった。いろいろあった。地獄かと思う場面も数回ではない。

トライ&エラーの繰り返し。息子は苦しくて「死にたい。殺したい。」を叫ぶたびに、何度、胸をえぐられてきたことか。
「生きたいのだ。」本当は生き生きと生きたいのだ。

私たち親はこの会にすがるように助けを求めた。会との出会い、それが初めの一歩だった。

良医にも出会った。薬はほとんど使っていない。それから6年、社会にも参加できるようになった息子は涙ぐみながら、
「脳が整ってきたような気がする。心と精神が成長していると実感している。まだ十分ではないけれど、人ともかかわれるようになってきたよ。10代の頃は、俺の脳みそはペラペラだった。長い間、サポートしてくれて感謝しているよ。」と。

知性は感情の成長なしには育たない。感情が育てば、自ずと周囲の人間から学んでいくことができるようになる。

私たちはこの会に出会って、同じような苦しみを持つ親が、経験豊かなアドバイサーとともに、自分たちのこと、ほかの家族のケースを勉強していくうちに、親としての在り方、人間として何が幸せなのか、という価値観まで変わって行った。
親が成長し、息子との距離や、関わり方を学んでいるうちに、息子がゆっくりと成長し始めた。世間体や恥ずかしいなどと言っている場合ではない。頼れそうな人にはどれだけ頼んできたことか。子どもを理解しようとどれだけ勉強してきたか。

10年戦争…3650日…。
才があれば、何冊の小説と何枚のレポートがかけることか…。
人との出会いが、人とのかかわりが、人の心を癒し、歪んだ脳を整えていく。
人のぬくもりが、社会に人間に心を閉ざしてきた心に瑞々しい水を流していく。
1000回失敗しても1001回目の試みが、硬い岩盤に亀裂を入れ、水の通路を作っていく。
それまでの1000回があったからこそ、1001回目に力が発揮されるのだ。

そうした人とのかかわりを、どう親がセットしていくか、それをこの会は教えてくれた。
会のメンバー、的確なアドバイスと働きかけをして下さった方に、どれだけ感謝しても感謝し尽くせない。

まだ危なっかしい息子ではあるが、目つきが変わってきた。人間らしい優しさも身体の中に育ってきた。
子どもたちが、巣から飛び出し、大空を自由に飛べる日まで、親は諦めずに、命あるかぎり全身全霊をかけて、子どもの魂を救い、成長させていかなければならないと思う。

( 神奈川県から参加 / 2015年 )