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孤独だからこそ見える人生を豊かにしてくれる本質

『孤独論 逃げよ、生きよ』
田中慎弥著/徳間書店
https://www.tokuma.jp/book/b494537.html

本書は10年以上のひきこもりを経験した芥川賞作家、田中慎弥の人生論です。通常ネガティブに捉えられがちな「孤独」について、著者の経験を踏まえた言葉を聞いていると人生において大事なものだということに気づかされます。

「孤独から活路を見出せ」

この言葉は、著者と同じく10年以上ひきこもった私の心に一番響きました。
孤独な時間があるからこそ、人は自分自身を振り返ることができる。孤独でいられたからこそ、他人の言いなりにならず、自分らしく生きていくことができた。ゆえに孤独は大事なのだ、と筆者は訴えています。

私自身もひきこもっていた期間、常に孤独を感じながら生きていました。辛いこともありましたが、孤独であったからこそ誰かに流されることなく自分の意志を尊重できるようになったと思います。だから、「孤独から活路を見出せ」という言葉が心に響くのです。

人づき合いを増やさなければいけない。相手の顔色をうかがいながら、自分の意見を言わなければいけない。そんな同調圧力の中で私は生きてきました。しかし、著者はこう問いかけます。

「相手に合わせることに躍起になって自分自身を見失っていないか」

自分自身で考えていない状態を筆者は「奴隷」と呼んでいます。その「奴隷」のままではなく、「自分の足で生きていけた方が人生楽しいのではないか」。

筆者の数々の言葉が、私自身の日々の生活をもう一度見つめ直すきっかけとなりました。

本書は口述筆記の形で作られています。難しい言葉も少なく、内容も筆者の経験を元に書かれているため理解しやすいと思います。また、1ページあたりの文字数も多くはなく、一つのテーマごとに細かく章立てされているので、あまり読書をしない方にもおすすめできます。

常に人の目を気にすることの多い世の中だからこそ、孤独の中で生きてきた著者の言葉がきっとこれからの人生を豊かにしてくれると思います。(菊)

※清々しいほどふてぶてしい著者の芥川賞受賞記者会見の動画もお楽しみください。